2008年02月29日

尼崎店おすすめの一冊 「北方領土特命交渉」


北方領土特命交渉
著者名:鈴木宗男(著)
     佐藤優(著)
出版社:講談社
出版年:2007.12
ISBN :9784062811668


 『L changed the WORLD』。この映画をご覧になっていなくても、猫背で白いシャツを着た上目遣いのメイクした青年の大きなポスターは目にされているかもしれない。大ヒットした『デスノート』『デスノート the Last name』のスピンオフ作品である。
 藤原竜也演じる夜神月(やがみ ライト)と松山ケンイチ演じるL(エル)。お話を知らない人には、どう見たってL(エル)が悪役に見えてしまう。
 
  鈴木宗男氏と佐藤優氏。両氏ともなぜかヒール(悪役)がよく似合う。さしずめ相対するベビーフェイス(善玉)は外務官僚か。
 プロレスのように勧善懲悪がはっきりした単純な世界ならまだしも、現実の世界では正義と悪の判断は難しい。
 
 佐藤優氏の情報分析力、情報分析に基づいた鈴木宗男氏の行動力、それに裏付けられた二人の意見は、かなりの説得力を持つ。
 その対極に、よく言えば安定を求める、悪く言えば不作為、即ち何もしないのだから何も変わらないし、失敗を恐れ、国益とは正反対の保身に汲汲する外務官僚の姿がある。
 
 本書のコピーに「極上のスパイ小説」とあるが、架空のお話ならば愚か者を笑ってすませられるが、鈴木氏の言葉どおり、すべてが事実ならば、この国に将来はあるのかという絶望に近い危惧を覚える。
 情報に惑わされること無く、自らの責任で判断をくだすことの大切さを教えてくれる一冊である。
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2008年02月22日

尼崎店おすすめの一冊 「甲子園への遺言」


甲子園ヘの遺言
著者名:門田隆将(著)
出版社:講談社
出版年:2005.06
ISBN :9784062129664


「巨人・大鵬・玉子焼き」。昭和36年の流行語。子供が大好きなものの代名詞。
銭湯の下足箱の木札を背番号に見立て、「1番王」、「3番長島」と先を争った少年たち。プロ野球選手はまさに憧れの的だった。
 昭和42年、高畠導宏が南海ホークスに入団したころとは、そんな時代である。
 
 当時の南海は常勝チームであり、その裏づけが球界に先駆けてのスコアラーによる情報収集と、データをもとに確率の高いプレーをする「シンキングベースボール」である。
 アマ全日本の4番打者という鳴り物入り入団した高畠は、スラッガーとして期待されるが、練習中の肩のケガが原因で、わずか5年の短い現役生活を終える。
 弱冠28歳で打撃コーチ就任。ここから伝説が始まる。
 
 99%の打撃コーチは、理想のフォームを選手に押し付け、型にはめようとする。あの落合博満でさえ、アッパースイングだから使えないとダメを押されるくらいだ。
 高畠は選手一人一人の長所を伸ばすことにより、欠点を克服させる。そのために選手とコミュニケーションをとりながら、アイデアあふれるユニークな練習方法をいくつも生み出している。
 ピッチャーの配球を読み、クセを盗み、球種を読む。徹底したデータ分析により、相手チームを攻略する。野球は相対である。相手を知り、コーチの力で打者に打たせる。選手とともに戦うコーチ、それが高畠である。
 
 人は心理的圧迫を受けると力が発揮できなくなる。
 高めのボールに手を出すなと指示すると、意識は逆にその“高め”にいき、言われたとおりの失敗をしてしまう。してはいけないアドバイスが氾濫している。
 心理を学ぶうちに、それは教育への熱い思いへと変わっていく。
 こうして59歳の新人教師、高畠導宏の誕生する。
 
 読む人によって、幾通りもの読み方ができる本。
何度もくりかえし読みたくなる一冊である。
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2008年02月14日

尼崎店おすすめの一冊 「ザ・ジャストインタイム」


ザ・ジャストインタイム
著者名:フレディ・バレ(著)
     マイケル・バレ(著)
     依田卓巳(訳)
出版社:ダイヤモンド社
出版年:2007.11
ISBN :9784478000465


新聞紙上では、アメリカ大統領予備選の模様を連日報道している。
オバマ、クリントン両民主党候補が注目され、親日家で知られる共和党マケイン候補はブッシュ大統領のマイナスイメージからか、扱いが小さい。
あまり親日とは言えぬ民主党候補の大統領が誕生すれば、かつての貿易摩擦・自動車戦争といった不利益な状況が生じるのではないかと懸念する政治評論家もいる。

 早くから日本の自動車メーカーの生産技術に着目し、トヨタの生産方式を学んだボブは、冷ややかな周囲の反応の中、数々の工場を再生させるという業績をあげ、自動車部品メーカーで重職を得るが、現在は引退し、悠々自適の生活をしている。
 息子の親友フィルが経営するメーカーが資金難となり、助けを求められたボブは、工場再建へのアドバイスを与えるところから、この物語は始まる。

 同じ製品・作業は一度にまとめてやったほうが効率的であるとする考え方は、顧客の需要という視点が無い。大量生産された製品は在庫となり、お金の流れを止めてしまう。
 顧客の需要から作業を組み立て、必要なものを必要なときに必要な量だけ作る。製品はお金となり、利益を生む。あたかも体を流れる血液のように、在庫による動脈硬化をなくし、お金は流れ始める。

 ただし、生産システムを変えても、それを運用するのは人である。作業する人がその価値を理解していなければ、システムは自律的に動かない。まず「人ありき」なのだ。

本書に書かれている原則はメーカーにとどまらず、販売・営業、そして個人にも応用の効く考え方である。
日本的とされた考え方が、アメリカで咀嚼され、日本に帰ってくる。
「現場」「改善」「かんばん」を説くタフなボブの姿は、ちょっと笑える。
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